4月25日(現地時間)に久しぶりのリアルイベントとして行われたアカデミー賞授賞式。今年もさまざまな話題があったなかで、多くの人を驚かせた、発表するカテゴリーの順番を変えたことについて、テレビ中継のプロデューサーのひとりで、映画監督でもあるスティーブン・ソダーバーグが語りました。
ここ数年でアカデミー賞授賞式でのハプニングといえば、2017年の作品賞受賞作の間違い事件がなんといってもナンバーワンではあるものの、今回も最後の発表となった主演男優賞を受賞したアンソニー・ホプキンスが欠席だったため、受賞スピーチがなく、そのうえプレゼンターのホアキン・フェニックスがあっさり番組をシメたため、見ている人にとっては少々盛り上がりに欠けた印象。
これまで、アカデミー賞授賞式は最後に作品賞が発表されるのが恒例だったこともあり、テレビ中継のプロデューサー陣に対しては、主演男優賞にノミネートされていたチャドウィック・ボーズマンが受賞することを前提にして、発表するカテゴリーの順番を変えたのではないかと批判の声もあがっていました。
しかし、米『Entertainment Weekly』によると、米紙『LA Times』にソダーバーグ監督は発表の順番入れ替えは「ノミネーション発表の前、1月には話し合っていたことです」とコメント。「私たちの信念であり、根拠がないことではないと思っていますが、俳優のスピーチはプロデューサーのスピーチよりよりドラマチックになる傾向があるんです。そのため我々は順番を入れ替えたら楽しいだろうと考えました。ですから、順番を入れ替えるのはずっと計画にありました」と、チャドウィックの受賞が前提ではなかったと反論。
ただし、チャドウィックが主演男優賞にノミネートされたこと、そして前哨戦といわれる映画賞で受賞していたことが、この決定を後押ししたことは認めたそう。
「ノミネートが発表され、チャドウィックが受賞する可能性がでてきたとき、我々はもし彼が受賞して、未亡人が彼の代わりにスピーチをしたら、これ以上のことはないだろうと感じました。それで、その決断にこだわったのです。チャドウィックの受賞を前提にしていたわけではありませんが、彼が受賞して、未亡人がスピーチする可能性が少しでもあるならば、それを考慮しなければなりません。そうなったらとても強烈な瞬間になったでしょうから、その後も授賞式を続けるのは不可能だったでしょう」と語ったソダーバーグ監督。
チャドウィックが受賞していたら、会場も視聴者も大盛り上がりとなり、きっと主演男優賞の発表を最後にもってきたプロデューサーたちの決断は絶賛されたに違いなく……。テレビを見ていた人にはやや盛り上がりに欠けたエンディングとなった授賞式ですが、プロデューサー陣の心の内は、これ以上ないくらいにドラマチックだった授賞式だったのかも知れません。