記録的な大寒波の到来で行き場がないホームレスの集団が図書館のワンフロアを占拠。突如勃発した大騒動に巻き込まれたひとりの図書館員の奮闘を軸に、笑いと涙たっぷりのストーリーが展開していく映画『パブリック 図書館の奇跡』。エミリオ・エステベス監督のインタビューが届きました。
本作のきっかけは、2007年にソルトレイクシティー公共図書館の元副理事チップ・ウォードがロサンゼルス・タイムズに寄せたエッセイ。図書館がホームレスのシェルターとなっている現状や、彼らの多くは精神疾患を抱えていることが描かれています。
エミリオ監督は、そのエッセイを読んで、「これは映画になると感じたというよりも、図書館で何かできるのではないかと感じ、映画のリサーチのためにロサンゼルスにあるダウンタウンの公共図書館で、静かにそこで起きることを観察していたんだ」「だいぶ足を運んだ時に、常連のホームレスが自分に対して、『いつもいるな』と信頼し始めてくれて。どうやって自分が路上生活者になったということから話をしてくれたりするようになった。オープンな人もいれば、声をあげられたりして、怖くなってしまったこともあったんだけどね。そうやって色々な人の話を聞いて、この作品をつくっていったんだ。彼らとの会話や図書館で過ごした時間は得難い価値があったと思う」と振り返ります。
また、路上生活者にとっての図書館について「ホームレスになった人はサバイバルモードになってしまっているんだ。でも、図書館に行くと1日8〜10時間くらいは室内に入れて、本が読めたり情報にアクセスができたりすることができるから、彼らにとっては安寧を感じられる場所なんだ」と分析。
図書館などの公共施設がホームレスや社会的に立場の弱い方を救うために、どのような役割を負うべきか尋ねられると「この国にはホームレスを“不憫だけど、仕方がない”と思う人がたくさんいる。ホームレスになってしまうのは、自力で苦境を打破するための一歩を踏み出さない自己責任としてしまうわけだ。図書館や公共施設がそうした人たちを助けるのは、道徳上の任務だと思う。人の心を持っていれば、当然のことだけど、この分断の世の中に人の心を持たない人がたくさんいることは残念だ」と語りました。
最後に日本の観客へ向けて「私たちは社会的に弱い立場にいる人だったり、ホームレスだったり、肌の色が違う方だったり、声なきものに対して、こういうストーリーがあるんじゃないか、と勝手に思い込んでしまうんだ。僕の場合も、エミリオ・エステベスはこういう育ち方をしたんじゃないか、とそういうイメージを押し付けられるようにね。それって、皆やっていることだと思う。でも、それは間違っていることが多いので、その人のストーリーを勝手につくらないでほしい。それと、スマホとかパソコンを持っている人は、公共図書館が情報をアクセスできる役割を果たしているんだ、ということを改めて実感してほしい。そのくらい、必要不可欠な機関ということを改めて感じてほしい。理由はこの映画の中でいっぱい描いているから、伝わるといいなと思っている」と思いを明かしました。
『パブリック 図書館の奇跡』
7月17日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
配給:ロングライド
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