10月29日、Netflix映画『アースクエイクバード』の記者会見が行われ、主演のアリシア・ヴィキャンデル、小林直己さん、ウォッシュ・ウエストモアランド監督が登場しました。
『アースクエイクバード』は、日本在住経験があるイギリス人作家スザンヌ・ジョーンズによる同名ミステリー小説の映画化。舞台は東京。ミステリアスな日本人写真家、禎司(小林直己)と恋に落ちた外国人女性ルーシー(アリシア・ヴィキャンデル)は、やがては三角関係に心乱され、行方不明になった友人リリー(ライリー・キーオ)殺しの容疑がかけられてしまいます。異国で暮らす女性の揺れ動く心理を繊細な描写で描いたサスペンス・ミステリーです。
アリシアが演じたルーシ-は、自分の生まれた国を捨てて日本に根を下ろす覚悟をしている西洋人女性という設定。そのため日本語の台詞も多く、しかもできるだけ日本語を上手に話す必要もある役どころ。日本語の台詞については、「東京が舞台なので、シーン毎に英語、日本語、どちらで話すか監督と話し合いました。最初に英語で全部の台詞を言って、ダイアローグコーチが何度も日本語に翻訳し直す作業をしたんです」と、入念に準備をしたことを明かしました。
とはいえ、冒頭に日本語で挨拶したとき、緊張のあまりつかえてしまったアリシア。「撮影現場ではもっとリラックスして話せる環境だったんですよ」と弁解しつつ、「私はスウェーデン人で、この業界に入るにあたり英語を学んだ経験があります。ここ数年、世界はどんどん小さくなっている、いろいろな文化が混ざり合う環境になってきていると感じます。日本語を覚えることは、日本の文化を知ることで、ルーシーという役を知ることになりました。この作品のために、日本に住んで、仕事をして、日本を体験することができたのはとてもラッキーで、いろいろな人に出会いましたし、おそばを食べにいって大好きになりました。そういうたくさん楽しい冒険をたくさんすることができました」と日本での仕事を振り返りました。
しかも日本に滞在してみて、日本と母国スウェーデンは「似ている」と思ったのだとか。「以前は、まったく違う文化だと思っていました。でも日本に来てみたら、スウェーデンととても美意識が似ていると思いました。ミニマリストなところとか、木やガラスをよく使うところ。あとは、行列を作るのが好きだったり、家のなかでは靴を脱ぐとか、漬物や生魚をよく食べるのも似ていると思いました」と、知られざるスウェーデン情報を教えてくれました。
日本に来た外国人の気持ちを描いた
また、ウォッシュ・ウエストモアランド監督は1980年代に日本に滞在したことがあるそう。「この作品は私にとっては特別なものです。西洋人と日本、日本人との関わり、日本に来た外国人の気持ちを描きました」「原作者は1980年代に日本に住んでいて、実は私も同じ時期にいたんです。当時はお互いに知りませんでしたが……。小説が出版されたのは2004年で、初めて読んだとき、私はとても自分に通じるものを感じました。ルーシーの気持ちがよくわかったのです」と、原作への思いを告白。
「チャレンジングだったのは、小説がルーシーの独白で書かれているので、どうやってルーシーの視点をキープしながら映画にしていくかということ。映画にするにあたっては、具体的なシークエンスもありましたし、いろいろなアイデアを付け加えることを原作者がサポートしてくれました。オリジナルのトーン、気持ち、魂を維持することを大切にしました」と映画化するにあたっての苦労を明らかに。
撮影にあたっては、「とにかく日本での体験をリアルに描くことにこだわりました。私はイギリス人で、若い頃に日本に住んだことはあるけれど、ひとりで作りあげるのは不可能。プロダクションデザイナー、コスチューム、ヘアメイクら、クリエイティブな人々と一緒に、とにかくストーリーをリアルにすることにこだわりました」と、スタッフに感謝。
そうして出来上がった作品について、アリシアは「西洋ではみたことがない作品。とても独創的な映画に仕上がっています。こうしたいろいろな文化がミックスされた映画は今後増えていくと思う」と自信を見せました。
禎司にとってのカメラは僕にとってのダンス
また、日本のファンにとっては、この作品で小林直己さんがハリウッド映画デビューを果たしたことも見逃せません。小林さんは、「英語は母国語ではないので、準備はしっかりして臨みました。日本で生まれて、日本語を母国語とする者として、禎司には共感する部分、彼が内に秘めた価値観、大切にしているものにはリンクするものがありました」と禎司役についてコメント。
カメラマンという役柄については、「ふだんは撮られる方が多いのですが、禎司にとってカメラとは何かと考えたとき、僕にとってのダンス、自分の心を表現するのにいちばんフィットするものだと思いました」と分析。「ならば、ダンスと同様にカメラと向き合う時間が必要だと思い、1980年代のオリンパスのカメラを買って東京の街を撮り始めました。そうして、自分は何を撮りたいのか、禎司は何を撮りたいのかを探ることで彼とリンクする部分を見つけました」と役作りを振り返りました。
また、劇中には小林さんがライリー・キーオ演じるリリーとダンスするシーンも。「ダンスのシーンは、僕も大好きなシーンで、僕のダンスを好きでいてくれる方にも喜んでくれると思う。物語にとっても大事なシーンとなっています。ダンスについては監督から黒澤明監督の『酔いどれ天使』のなかのシーンを参考にという話があり、そこから踊り、衣装のインスピレーションを得ました。そして監督、ライリーと一緒にリハーサルを重ねて作りあげました」と解説。
そんな小林さんとの共演について、アリシアは「リハーサルで初めて会った時、すでに役を深く掘り下げていることに感心しました。ずっとカメラを持って撮っていましたし、彼は目でストーリーを語れるタイプ。それは俳優としてとても大切なことだと思う。共演を通じて、お互いにプッシュしあえる関係になったのは素晴らしかった」と語り、監督は、「禎司役はなかなか決まらなかったのですが、彼のオーディションテープを見て、彼の中には闇、激しさ、複雑な部分があると感じました。キャスティング・ディレクターは奈良橋陽子さんだったのですが、私は“彼にはスターパワーがある”と言ったんですよ」と小林さんの俳優としての魅力をアピール。
小林さんは制作総指揮のリドリー・スコットからも「これからも続けた方がいい」と言われたことを明かし、「今後も日本語、英語を使いながら挑戦していきたい」と、展望を語りました。
Netflix映画『アースクエイクバード』
11月15日(金)より全世界独占配信開始
