9月26日、映画『永遠の門 ゴッホの見た未来』の舞台挨拶が行われ、ジュリアン・シュナーベル監督と主人公フィンセント・ファン・ゴッホを演じたウィレム・デフォーが登壇しました。
『永遠の門 ゴッホの見た未来』は、ゴッホの絵が長い年月にわたり、多くの人々の心をとらえて離さないのか、その核心に迫る作品。画家でもあるシュナーベル監督により、ゴッホの見た世界を観客も体感できる、稀有な映画となっています。
そんなシュナーベル監督は、ゴッホの映画を作った理由について、「作らないわけにはいかなかったのです。でも最初はゴッホについての映画は作りたくなかった。なぜなら、すでにゴッホの映画は数多くあったので、必要ないと思ったのです」と、ゴッホの人生を描く映画は最初から作るつもりはなかったことを明言。
「でも作らなければならないと思ったのは、彼の作品は何かとても純粋なものに我々を連れて行ってくれる乗り物だと思ったからです。妥協が一切ありません。それがアートの本質で、純粋にそれをやりたいという欲望だけなんです。私たちはゴッホの映画を作るにあたり、アートを作るプロセスについての映画を作りました。絵画であろうと、演技、映画づくりであろうと、私たちはアートに自分自身を差しだすのであって、そこにはアートとそれ以外しかありません」「なので映画を見れば、ゴッホについての映画ではない、ゴッホを見る映画でもないことがわかると思います。みなさんがゴッホになる、みなさんの映画です。これがこの映画を作る十分な理由だと思いましたと、アート論を交えつつ、この作品の意義を語りました。
一方、ゴッホを演じたウィレムは「ジュリアンとは長年の友人なので、絵を描くシーンがたくさんあることはわかっていました。撮影では絵を描く代役はおらず、全部自分で描いたんですよ。実際にゴッホがいた場所で撮影ができることもわかっていました。撮影にあたり、ジュリアンから絵を描くことを習ったのですが、物の見方が変わりました」とコメント。
「それはモノの形状を見るのではなく、光を捉えるということです。ひとつずつ絵筆を重ねていくと、それらがお互いに振動し始め、自分の想像を超えたものが生まれることがわかったのです。それは映画づくりというより、経験といえるものでした。実際にゴッホがいた場所で、彼が見た風景をみながら、ゴッホがどんな人物だったかを我々なりに想像したものが映画になっています」と、ゴッホになりきった経験を振り返っていました。
舞台挨拶には特別ゲストとしてリリー・フランキーさんも登場。リリーさんは「日本人は美術館によく行くし、なかでも印象派が好きで、とりわけゴッホは大好き。僕がこの作品を見たのは3日前ですけれど、まだ映画のなかにいるのか、ゴッホの視線のなかにいるのかわからないような気持ち。ゴッホを愛おしく感じたのは初めてです」と、映画の感動からまだ覚めやらぬ様子。
さらに「ウィレム演じるゴッホが日の出を待ってスケッチに行くシーンで、微笑んだゴッホの顔が、ゴッホのさみしいエピソードを救ってくれてすごくハッピーになりました」と感想を述べると、ウィレムはうれしそうな笑顔を見せました。
監督は「そこは映画の中でもとても重要な場面です。なぜなら私はゴッホはかわいそうな人だったとは思ってないんです。あの場面のあの瞬間、ゴッホは自分がいたい場所にいた人物だということがわかる。そこを見てくださってとてもうれしい」と喜び、「あのシーンでウィレムの顔に浮かんだ微笑みには、計りきれないものがありましたね」と、その時のことを懐かしむようにウィレムの演技を大絶賛。するとウィレムは「なんだか自分のお葬式にいるような気分になってきました」と、会場に詰めかけた観客を大爆笑させていました。
『永遠の門 ゴッホの見た未来』
11月8日(金)新宿ピカデリー他 全国順次ロードショー
配給:ギャガ、松竹
© Walk Home Productions LLC 2018