主演・製作を務めた最新作『アド・アストラ』が公開中のブラッド・ピット。この作品では孤独で人との関係をうまく築けない主人公を演じていますが、この作品にブラッドが関わることが決まったのは2017年の初めだったとか。2017年初めといえば、ブラッドとアンジェリーナ・ジョリーが破局した直後。ブラッドは『New York Times』に、当時の様子やその経験が与えた影響などを語っています。
2017年のアカデミー賞でのドタバタはテレビで見た
2017年のアカデミー賞では、ブラッドがエクゼクティブ・プロデューサーを務めた映画『ムーンライト』が、アカデミー賞作品賞を受賞。しかし、会場にはブラッドの姿はありませんでした。一体、どこで何をしていたのかと思いきや、その晩、ブラッドはロサンゼルスにおり、授賞式よりジェームズ・グレイ監督宅で友人たちを交え、スパゲッティのディナーを食べることを選んだのだそう。
そしてグレイ監督夫人がアカデミー賞授賞式を見るために他の部屋に移ったことから、ブラッドもテレビで、受賞作が『ラ・ラ・ランド』と間違って発表され、その後『ムーンライト』だと訂正されるという世紀のハプニングを見ることになったとか。その時のブラッドのリアクションは? グレイ監督は「彼は“オォ、ワオ。クールだね”と言ってました。感謝してなかったわけじゃありません。でも夢中にはなってはいなかったです。冷静でした」と振り返っています。
『アド・アストラ』は主人公の孤独に惹かれた
日本で行われた記者会見で、『アド・アストラ』は広大な宇宙を舞台にした主人公の自分探しを描いた作品だと語っていたブラッド。「他者とつながれないこと、本当の意味でオープンになることから我々を遠ざけるために人が築きあげてしまう自己防衛メカニズムを探求したかったんだ」と、作品のなかでも描かれている主人公の孤独に惹かれたことを明らかに。
役に私生活での経験を生かしていたと監督は語る
『アド・アストラ』でロイを演じることが決まった2017年初め頃、ブラッドはまだアンジーとの破局、6人の子供たちと会えなくなったことに動揺していたそう。「彼は明らかに、自分の人生から受けた刺激を使いました。私は彼の個人的な面に立ち入らないし、私の仕事に関係ないと思っていますが、彼はキャラクターのエッセンスを自分自身を通して探求していました」とグレイ監督はコメント。
一方、ブラッド自身は「家族の問題があった」と語るにとどめ、『アド・アストラ』での仕事に自身が経験した孤独を生かしたかと聞かれると、「僕たちはみんな、痛みや悲しみ、喪失感を抱えている。ふだんは隠しているけれど、それぞれの中にある。その箱を開けるんだよ」と、自分だけでなく誰もが抱える感情であることを強調しています。
破局後1年半にわたりアルコール依存症の相互援助グループに通った
ブラッドとアンジーの破局は2016年9月、プライベート機で移動中にブラッドの飲酒をめぐってのケンカが原因だったと言われています。ブラッドはアンジーが離婚を申請したのを機に、アルコールをやめたことを明言。さらに1年半にわたり、アルコホーリクス・アノニマスと呼ばれる、アルコール依存の回復のための集まりに通ったことも語りました。
そのグループは全員が男性だったそうで、ブラッドは彼らの正直さに感動したとか。「それらの男たちが座って、僕がこれまで聞いたことがないような感じでオープンに、正直に話すんだ。そこは安全なスペースで批判されることもないし、自分を非難することもない」。そしてそこにいた人々は、ブラッドが通ってきていることをメディアに一切もらさなかったのでした。そのお互いへの信頼にブラッドはカタルシスを得たのだとか。「自分の醜い面を晒すのは、本当に解き放たれる行為だった」と振り返ったブラッド。そうした、プライベートでの孤独、痛みやどん底の経験が『アド・アストラ』、ブラッドの演技に昇華されているようです。