21日、ウェス・アンダーソン監督最新作『犬ヶ島』のスペシャルイベントが行われ、アンダーソン監督、ボイスキャストを務めたコーユー・ランキン、ジェフ・ゴールドブラム、野村訓市さんが登壇しました。
『犬ヶ島』は、日本を舞台に、“ドッグ病”の大流行によって犬ヶ島に隔離されてしまった愛犬を探す、少年と犬たちとの旅と冒険をストップモーション・アニメーションで描いた作品。2月に行われたベルリン国際映画祭で銀熊賞(最優秀監督賞)を受賞した話題作です。
ストップモーション・アニメは一流の職人たちとの仕事が魅力
ストップモーション・アニメーションとは、静止している物体をヒトコマ毎に少しずつ動かし、まるで動いているかのように見せる技法。アンダーソン監督は、以前、ストップモーションアニメ作品『ファンタスティック・Mr.FOX』を作っています。「その時、時間をかけてストップモーションアニメのことを勉強して、やっとわかったと思ったら終わってしまったんですけど、知識は豊富にあったし、その作品を通して素晴らしいアニメーターたちと出会うことができたし、今回、すべてのパペットを制作したアンディ・ジェントと出会うことができました。そういったいろいろな人々との出会いや経験を生かして作ろうと思ったんです」と、『犬ヶ島』をストップモーション・アニメで撮影した理由を説明。
実写作品でもセンスを感じさせる作品を発表しているアンダーソン監督。実写との違いを聞かれると、「違いはたくさんありますが、ストップモーションアニメで一番好きなのはパペット作る人、セットを作る人々など、手作りの職人たちと仕事ができることです」と断言。「ひとつずつ動かし、ヒトコマずつ撮影していく手法は映画が始まって以来、長年続くことです。とても古風な映画づくりの手法だといえるでしょう。それに携わることは私の夢で、その夢を初めて叶えたのが『ファンタスティック・Mr.FOX』でした。実際にアニメーターの人々の仕事を見ていると本当に素晴らしいのです。ボイスキャストによってキャラクターに半分の命が吹き込まれます。残りの半分はアニメーターが演技をつけることで作られていると思います。今でも彼らの技術は私にとって大きなナゾです。ひとつひとつのコマをどう動かすかは、事前にすべて決めてあります。アニメーターの人々はそれに従って動かすのですが、それぞれのアニメーターによってちょっとした動かす角度が変わってくる。それによって、魔法をかけたように、物体のパペットがモノを考え、感じる生き物になる。その姿を見るのが楽しかったので、またやりたいと思っていましたし、この映画が成功した理由だと思っています」と、アニメーターたちの職人技に魅せられている様子。
ティーンエイジャーの頃から日本映画ファン
今回、13年ぶり2度目の来日となったアンダーソン監督。実はティーンエイジャーの頃から、日本映画をよく見ていていて、初めて観た日本映画は『たんぽぽ』。黒澤映画もたくさん見て、とても影響を受けてきたそう。そして、2004年頃に初めて日本に来て以来、ずっと日本で映画を撮影したいと思っていたそう。「その結果として、ミニチュアを使って日本では撮影していないこの映画を撮ることになった。これは自分にとって予想外でした。野村訓市さんは前作『グランド・ブタペスト・ホテル』にも出てもらっていますが、彼から日本のこともいろいろ聞いて、素晴らしいコラボの結果、この映画ができました」と、『犬ヶ島』製作のいきさつを明かしました。
今作はオノ・ヨーコさんをはじめ、日本人ボイスキャストの顔ぶれも超豪華。なんとヨーコさんとアンダーソン監督は知り合いだったのだとか!
「彼女はとてもいい人で、以前、作品のなかで彼女が権利を持つ音楽を使わせてくれていたこともありました。この作品では彼女を念頭にヨーコ・オノというキャラを作り、だったら出てもらおうということで、彼女に脚本や材料を見てもらって、出てくれるということになりました。他の日本人キャストはみな野村さんが紹介してくれたんです」。
アンダーソン監督作は2作目となる野村さんは、日本人キャストのキャスティングに当たっては、監督からキャラクターの年齢、設定を細かく聞き、その年齢に近くて、人柄がわかっていて、さらに言うことを聞いてくれそうな友達に声をかけたとコメント。それぞれに設定を説明し、台詞を言ってもらったものを録音し、それをウェス監督におくったとか。「今回たくさん役があって、それぞれがとても短いのですが、映画を見た時に誰の声かを見つけるのも楽しい見方ではないかと思っています」と語っていました。
ジェフ・ゴールドブラムの参加はたった2時間!
アンダーソン監督は6年、野村さんは3年に渡り、『犬ヶ島』に関わったそう。しかし、デュークという犬のボイスキャストで参加したジェフ・ゴールドブラムは「私のところに脚本がおくられてきて、私はそれを読んで、録音スタジオに行って2時間レコーディングしました。しかも、その時監督はニューヨークにいたので、長距離で演出されて。2時間。それだけなんです」と、超短期の仕事だったことを告白。
「でもとても楽しかったし、出来上がった作品を見たら素晴らしかった。私は他の犬たちと一緒に仕事はしていませんが、まるでジズソーパズルのようにピッタリ合っていた。これはうれしいショックでした。脚本ではストーリーがわかっていなかったので、私は3回見ました。みなさんも一回以上見るべきです」と大プッシュ。
主人公アタリ少年の声優を務めたコーユー・ランキンは、「吹き替えは難しかったです。僕は最初とても緊張していたのですが、アンダーソン監督が落ち着いていたので、落ち着けました」と振り返っていました。
『犬ヶ島』
5月25日(金)全国公開
配給:20世紀FOX映画
©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation